【海外の流通トレンド】南アフリカの大手小売業が実践するPB戦略―中小食品メーカーとの共創が生む新たな事業機会
食品小売業におけるプライベートブランド(PB)は、一般的には安価な商品提供による集客や利益率の改善等を目的とした商品として捉えられることが多いと思います。
しかし、海外に目を向けると、PBを活用して商品の差別化を進めるだけでなく、地域の中小食品メーカーの成長を支援し、新たな市場を創出する企業も出てきています。
今回紹介するのは、南アフリカを中心に食品小売事業を展開するShoprite Holdingsです。
同社が2026年10月9日に公表した統合報告書とサステナビリティ報告書からは、日本の食品企業にも参考になる取り組みが見えてきます。
1.PBが食品売上の20%を占める小売企業
Shoprite Holdingsは、南アフリカを中心に複数のスーパーマーケットブランドを展開しています。
同社の2026年度売上高は2,708億ランド(日本円で約2兆5,000億円)に達する企業で、南アフリカ国内の食品小売市場で大きな存在感を持っています。今回私が注目したいのはPB戦略です。
2026年度の報告書によると、酒類を除く食品売上高に占めるPBの割合は20.1%。さらに注目すべきは、PB商品の88%以上を南アフリカ国内から調達していることです。
同社は消費者ニーズに応じてPBを使い分けています。
健康志向の商品を展開する「Simple Truth」、高品質・プレミアム食品の「Forage and Feast」、そして南アフリカ国内で製造された商品を扱う「Homegrown」などです。
単に低価格の商品を揃えるのではなく、価格、品質、健康、地域性といった異なる価値を商品に持たせています。
2.低価格商品から高付加価値商品まで
具体的な商品を見てみましょう。
Shopriteでは、600gのブラウンブレッドを5ランド(約47円)で販売しています。また、4人家族向けの食事キットを24.99ランド(約236円)で提供するなど、生活必需品の購入負担を軽減する取り組みを進めています。
一方、上位業態のCheckersでは、高品質な食品を展開しています。
「Forage and Feast」は、オリーブオイル、チーズ、菓子などを含むプレミアムPBです。2026年度の同ブランドの売上は前年比8.1%増加しました。
「Simple Truth」では、オーガニックのトマト缶や豆類、植物由来食品など、健康志向に対応した商品を展開しています。
同じ小売グループでありながら、価格重視の顧客から高品質な食品を求める顧客まで、幅広いニーズに対応していることが特徴です。
3.中小食品メーカーを成長させる仕組み
私が今回特に関心を持ったのは、Shopriteと地域の中小食品メーカーとの関係です。
Shopriteの「Homegrown」は、南アフリカ国内で製造された商品を扱うPBで、地域の中小企業が全国規模の小売市場へ参入する機会を提供しています。
また、同社はPB以外でも中小メーカーの販路拡大を支援しています。
例えば、ケープタウンの飲料メーカー「Gudgu」は、フルーツ系の濃縮飲料を製造する企業です。Shopriteグループの支援によって販売網を拡大し、現在では南アフリカの6州にある100店舗以上のCheckersで商品を販売しています。従業員数は14人の中小企業と報告されています。

地域の小さな食品メーカーが、大手小売企業との取引を通じて販路を広げている具体例です。
小売企業にとっても、地域の特色を持つ商品を取り入れることで、品揃えの差別化につながる可能性があります。
4.日本の食品企業にとっての事業機会
日本にも、優れた製造技術や独自の商品を持ちながら、販売チャネルや商品開発のリソースが限られている中小食品メーカーが数多くあります。
私は、こうした企業と食品小売・食品卸が連携し、新しい商品を共同開発する仕組みには、大きな可能性があると考えています。
例えば、地域の食品メーカーが得意とする製造技術を活用し、小売企業が商品企画や販売を担う。あるいは、複数の食品メーカーが協力して新たな商品カテゴリーをつくることもできるかもしれません。
重要なのは、単にメーカーへPB商品の製造を委託するのではなく、双方が商品価値を高めながら成長できる関係を構築することではないでしょうか。
もちろん、日本で同様のモデルを実現するには、製造ロット、品質管理、物流、利益配分など、さまざまな課題があります。
それでも、Shopriteの取り組みは、PBを起点として食品メーカーと小売企業の新しい関係を構築できることを示しています。
私は現在、食品メーカーが持つ優れた製造技術や商品開発力と、小売・流通企業の市場開拓力を組み合わせた、新しい食品流通事業を構想しています。

こうした取り組みは、国内における新たな食品市場の創出だけでなく、日本の食品メーカーが持つ技術や商品を海外市場へ展開する可能性も広げるものと考えています。
食品メーカーと小売・流通企業が、それぞれの強みを活かして新たな価値を生み出す。私は、そうした新しいビジネスモデルや、これからの食品流通のあり方について、関心をお持ちの企業・経営者の皆様とぜひ意見交換できればと考えています。
参考資料
Shoprite Holdings:2026年度統合報告書・サステナビリティ報告書
- Shoprite Holdings 公式サイト
- 2026年度 Annual Report(FinancialFilings)
- 2026年度 Environmental & Social Information(FinancialFilings)
※日本円換算額は概算です。商品価格・業績数値は参照資料に基づくもので、現在の販売価格や実績を保証するものではありません。


