【海外トレンド】米国スーパーの食事革命――「食材を売る店」から「食事を提供する店」へ

食品スーパーの競争相手が変わり始めている

米国の食品スーパーで、最近興味深い変化が進んでいます。

従来のスーパーは、野菜、肉、魚、加工食品など、家庭で調理するための食材を販売することが中心でした。しかし現在は、調理済み食品やミールキットを充実させ、消費者の日々の食事そのものを提供する方向へと事業領域を広げています。

私が今回特に注目したいのは、食品スーパーの競争相手が、ほかのスーパーだけでなく、レストランやファストフードなどの外食企業にも広がっていることです。

米国の食品産業団体FMIが2026年10月に発表した調査によると、米国の56%の世帯が、家庭で準備する食品と家庭外で調理された食品を組み合わせた夕食を週1回以上取り入れています。この調査は、米国の食品購入者1,480人を対象に実施されたものです。

消費者は、食事をすべて家庭で調理するか、外食するかという二者択一ではなく、生活スタイルに応じてさまざまな選択肢を組み合わせるような変化が起きているようです。

H-E-B――調理時間に合わせて食事を商品化

米国テキサス州を中心に展開する食品スーパーH-E-Bは、「Meal Simple」という食事関連商品を展開しています。

例えば、サーモン、ライス、ブロッコリーを組み合わせたオーブン調理用商品や、電子レンジで温めるだけの鶏肉料理などです。

特徴は、調理済み食品を販売するだけでなく、消費者が調理にかけられる時間や手間に応じて商品を選べることです。

「今日は料理をする時間がない」「簡単な調理だけで食事を用意したい」といった生活上のニーズを、具体的な商品として提案しています。

これは、従来の商品カテゴリーを中心とした売場づくりから、食事の場面を起点とした商品開発への転換とも考えられるのではないでしょうか。

Wegmans――スーパーの食事を家庭や職場へ届ける

米国東部を中心に展開するWegmansは、「Meals 2GO」というサービスを提供しています。

ピザ、寿司、サンドイッチ、サラダなどを、店頭受取や宅配で注文できる仕組みです。さらに、企業の会議やイベント向けのケータリングにも対応しています。

私が興味深く思うのは、スーパーの惣菜売場を、単に来店客へ商品を販売する場所として捉えていないことです。

家庭での夕食だけでなく、職場での昼食やイベントなど、さまざまな食事需要へ販売機会を広げています。

食品スーパーが持つ商品開発、調達、製造、店舗網を活用しながら、外食企業が提供してきたサービス領域へ進出していると見ることができるでしょう。

「何を売るか」から「どのような食事を提供するか」へ

このような一連の小売業の動きの背景としては、調理時間を短縮したいというニーズに加え、食品価格や外食費の上昇などがあります。

ただし、私は今回の変化を、単なる惣菜市場の拡大として捉えるだけでは不十分だと考えています。

従来の食品スーパーは、青果、精肉、鮮魚、加工食品といった商品カテゴリーを中心に事業を構築してきました。

しかし、消費者が求めているのは必ずしも個々の商品ではありません。「今日の夕食をどうするか」という生活上の課題を日々解決することです。

つまり、食品スーパーが「商品を販売する事業」から「食事の課題を解決する事業」へと進化し始めているのではないでしょうか。

日本でも惣菜・中食市場は市場規模を拡大しています。

今後、食品小売企業が成長機会を考えるうえで、既存の商品をどれだけ販売するかだけでなく、消費者の食事需要をどこまで取り込めるかという視点が非常に重要になると思います。

そして、この変化は食品メーカーや食品卸にも新たな事業機会を生み出す可能性があるのではないでしょうか。

次回は、米国大手スーパーKrogerの取り組みを取り上げ、商品開発、製造、調達、流通を組み合わせた新しい食品ビジネスの可能性を考えてみようと思います。


参考資料