【海外FoodTech】捨てられるカカオが新たな食品原料に――オランダ企業が挑む副産物の高付加価値化
食品メーカーの製造工程から発生する副産物には、まだ十分に活用されていない資源が数多く存在します。私は最近、こうした未活用の食品副産物や食品残渣を、新たな事業に活用できないかという点に注目しています。
一般的には、これらを飼料や肥料として利用する取り組みが多く見られます。しかし、食品原料として再び活用できれば、より高い付加価値を生み出せる可能性があると考えています。今回ご紹介したいのは、オランダのFoodTech企業「Greencovery」です。同社は2026年9月、カカオ加工副産物を機能性食品原料に転換する技術の商業化に向け、100万ユーロ(約1億7,600万円)の資金調達を発表しました。
1.カカオ加工副産物から3種類の食品原料を開発

Greencoveryは、オランダ・ワーヘニンゲンを拠点とするFoodTech企業です。同社は食品製造工程から発生する副産物を、独自の分離技術によって価値のある食品原料へと転換する事業を展開しています。今回取り上げるカカオ関連事業では、次の3種類の原料を開発しています。
- カカオファイバー
- カカオエキス
- カカオ由来の水溶性食物繊維
同社によれば、主要顧客との初期商業生産ロットの検証を終えており、事業パートナーとともに1,000トン規模の生産能力確保を目指しているとのことです。
また、カカオ以外にも、パルミジャーノ・レッジャーノの外皮から風味・食感改良素材を、大豆加工で発生するおからから食品向け機能性素材を開発しています。特におからの活用は、日本の食品企業でも事業化を検討できる領域ではないかと、私は注目しています。
2.なぜ今、食品副産物の高付加価値化なのか
このような商品開発が進む背景には、食品原料価格の変動、環境配慮の観点からの食品ロス削減への対応、そして食品メーカーによる新たな原料調達先の探索があると考えられます。
例えばカカオの場合、加工副産物から得られる素材が、風味や食物繊維などの機能を提供できれば、既存原料の一部代替や新商品の開発につながる可能性があります。ただし、副産物由来だからといって、必ずしも低コストになるとは限りません。回収、乾燥、分離、品質検査、輸送などの費用が発生することに加え、食品原料として安定供給できることも顧客から求められるためです。
私は、こうした事業では「何を製造できるか」以上に、「どの食品に、どの程度の価格で、どのような価値を提供できるか」が重要だと考えています。これが明確でなければ、顧客のニーズを捉えることができず、結果として販売につなげることも難しいでしょう。
3.欧州では商品化を見据えた検証が進む

2026年10月、オランダの食品イノベーション支援組織Foodvalleyは、食品副産物のアップサイクルを促進する「UPcycled4Food」の第2段階を開始しました。10月6日に開催されたイベントでは、食品メーカー、小売・外食企業、原料供給企業などの関係者が参加し、今後の取り組みについて議論しました。対象は、クッキー・ビスケット、パン類、乳製品との混合商品、食肉との混合商品の4分野です。
従来原料を使用した商品と、副産物由来原料を使用した商品について、味・食感、栄養価、環境負荷、経済性、社会的価値の5つの観点から比較検証する計画です。注目すべきポイントは、技術の優位性を示すだけではなく、食品メーカーや小売・外食企業が実際に採用できるかどうかを重視している点です。
プロダクトアウトではなく、マーケットインの視点で最初から検討している点は重要でしょう。食品副産物の活用が、研究開発から商業化に向けた検証へと進んでいることがうかがえます。
4.日本の食品企業も挑戦可能な領域ではないか
日本でも、米ぬか、酒粕、醤油粕、果実の搾汁残渣、ビール酵母など、多様な食品副産物が発生しています。これらには、食物繊維、たんぱく質、風味成分などを活かせる可能性があります。私は、食品副産物の事業化を考える際、まず想定される用途と顧客のニーズを明確にすることが重要だと考えています。
最初に取り組むべきことは、既存原料の代替、食品の風味改善、栄養価の向上など、食品メーカーが抱える具体的な課題を確認することです。そのうえで、原料価格、加工費、歩留まり、置換率、品質の安定性などを検証し、従来使用している原料と比較した経済的な優位性を明らかにする必要があります。
さらに、素材を開発する企業、それを商品化する食品メーカー、消費者に届ける小売・流通企業まで連携できれば、事業化の可能性はより広がるでしょう。食品副産物は、単に廃棄量を減らすための資源ではなく、新しい食品や市場を創出するための「食品素材・原料」になり得るのです。
日本の食品産業には、まだ十分に活用されていない技術や資源が数多く存在しています。私は、これらを新たな事業価値につなげる取り組みこそが、国内資源の有効活用、輸入原料への依存低減、環境負荷の軽減、食品ロス問題など、幅広い課題の解決につながる可能性を持っていると考えています。
参考資料
1.Greencovery(2026年9月14日)
「Greencovery Raises €1M to Scale Cocoa Upcycling Technology」
https://greencovery.com/greencovery-raises-e1m-to-scale-cocoa-upcycling-technology/
2.Greencovery|食品副産物の活用事例
「Cases」
https://greencovery.com/cases/
3.Foodvalley(2026年10月公表)
「Launch Phase 2 of UPcycled4Food」
https://foodvalley.nl/en/launch-phase-2-of-upcycled4food/
※100万ユーロの円換算には、2026年11月2日の為替レート(1ユーロ=176.45円)を使用しています。


