食品メーカーの利益が伸びない理由――原材料高騰時代に考えたい「収益構造の見直し」
食品の値上げが続く中で、考えたいこと
今年に入ってからも、食品の値上げが続いています。
帝国データバンクの調査によると、2026年10月の飲食料品値上げは3,153品目。2026年の年間値上げ品目数は、12月までの判明分で2万品目を超えています。
原材料価格だけでなく、人件費、物流費、エネルギー費、包装資材費など、食品企業を取り巻くコストは幅広く上昇しています。
こうした状況では、販売価格への適切な転嫁は必要です。しかし、「値上げをすること」と「利益が増えること」は必ずしも同じではありません。
例えば、販売価格100円、製造原価70円の商品を考えてみます。原価が10%上昇して77円となり、販売価格を5%引き上げても105円です。1個当たりの粗利益は30円から28円へ減少します。
さらに値上げによって販売数量が減少すれば、利益への影響は一層大きくなります。
私は、原材料高騰への対応を価格改定だけで考えるのではなく、商品開発、調達、製造、物流、販売まで含めた事業全体を俯瞰し、事業構造や収益構造を見直す機会と捉えることが重要だと思います。
商品別・販売チャネル別の収益性を把握する
収益改善を考える際、まず確認したいのは、どの商品が、どこで、どれだけの利益を生み出しているかということです。
販売数量が多くても利益率の低い商品がある一方、販売数量は少なくても高い利益を生み出している商品もあります。
また、同じ商品でも、食品卸経由、小売企業への直接販売、業務用市場、ECなど、販売チャネルによって収益性は異なります。
販売価格だけでなく、物流費、販売促進費、取引条件なども含めて確認する必要があります。
食品企業では売上高や販売数量が重視されがちですが、「どの商品を、どの顧客に、どの販売チャネルで販売すれば利益が残るのか」という視点が欠かせません。
商品によっては、新たな販売先を開拓するよりも、既存の販売先で取り扱う商品構成を見直す方が、収益改善につながる場合もあります。
調達・製造・物流・販売を俯瞰し、一体的に見直す
原材料価格が上昇すると、仕入価格の引下げ交渉や新たな調達先の開拓を検討する企業は多いと思います。
もちろん重要な取り組みですが、改善の余地はそれだけではありません。
例えば、品質を維持しながら原材料の規格や配合を見直すこと、製造工程の歩留まりを改善すること、生産ロットや段取り替えを最適化することなども考えられます。
また、物流面では、配送頻度、保管方法、在庫水準などの見直しが収益改善につながる可能性があります。
ただし、ここで注意したいのは、各部門が個別にコスト削減を進めても、必ずしも会社全体の利益が増えるわけではないということです。組織横断的な見直しが十分にできないというジレンマは、多くの企業が抱える課題の一つではないでしょうか。
例えば、購買部門が仕入単価を下げるために大量購入すれば、在庫や保管費用が増える可能性があります。製造部門が効率を優先して大量生産すれば、販売状況によっては廃棄ロスが増えるかもしれません。
部門ごとの最適化ではなく、商品開発・購買・製造・物流・営業が連携し、事業全体で利益を最大化する視点が必要になります。
コスト削減から、利益を生み出す事業構造へ
食品メーカーの収益改善というと、原材料費の削減や製造効率の向上に目が向きがちです。しかし、利益を増やす方法はコスト削減だけではありません。
商品構成を見直すこと、利益率の高い商品の販売を強化すること、販売チャネルを再構築すること、独自性や付加価値のある商品を開発することも重要です。
そのためには、営業、商品開発、購買、製造、物流などの部門が、売上やコストだけでなく、商品別・顧客別の収益性を共通の指標として考える必要があります。
原材料価格や人件費、物流費の上昇は、今後も食品企業の経営に影響を与える可能性があります。
様々なコストの上昇が続く現在だからこそ、従来型の「いかにコストを削減するか」だけでなく、「どのような事業の仕組みで利益を生み出すか」という視点が、これまで以上に重要になってくると考えています。
価格転嫁によって現在の利益を守ることと、商品・調達・製造・販売の仕組みを見直して将来の利益を生み出すこと。
この両方に取り組むことが、これからの食品メーカーの競争力につながるのではないでしょうか。
そのためには、社内の個別部門の視点だけでなく、企業全体を俯瞰し、客観的かつ大局的に事業を見渡すことが重要です。
時には外部の視点も取り入れながら、様々な角度から自社の事業を見直してみることが、今後の成長に向けた新たな可能性を見いだすきっかけになるのではないかと思います。
参考資料
- 帝国データバンク「食品主要195社 価格改定動向調査―2026年10月」(2026年9月30日)


